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「会議スタイル」が決まれば、使うデバイスが決まる
会議室に集合して他拠点と定例会議をするのであれば、参加者個人個人が端末を持ち寄る必要も無いので、据え付け型のテレビ会議専用機だったり、会議室の機材ボックスにデスクトップPCが一台置いてあれば良いでしょう。
一方、外出先のカフェや出張先の別オフィス、もしくは外出先でなくても各自席から参加となると、個人PC、特にノートPCからの参加が必須となります。回線はWi-fiまたはモバイルルーター経由で、決して高速では無い一般インターネット回線からも参加する必要があります。また、周囲に音が漏れたらいけませんから、ヘッドセットでの参加となるでしょう。
さらには、営業担当者が納品現場で技術者と会議したり、作業員が現場で本部に状況を報告したり、といったよりポータビリティーが重視されるシーンとなると、スマホやタブレットがいよいよ登場します。
つまり、いろいろと制限の多いスマホやタブレットはよほど限定された環境でしか本来遠隔会議に使用するべきではないとも言えます。
端末の存在が先立つことも多い
しかしながら実体は、目的よりも手段が先立つときがあります。
- セキュリティ観点からノートPCは社外に持ち出せない
- トップダウンでiPadまたはiPhoneが全社導入され、その活用に迫られている
このような状況は私も経験しました。
むしろタブレットやスマホの方が紛失・盗難リスクが高いと思うのですが、「PCかどうか」で線引きされて、特にiPadやiPhoneであれば社外から業務利用することが許されるケースが多いです。
それだけApple製品のセキュリティがビジネス用途で信頼されているということであり、通常は負のイメージをもたらしがちな囲い込みを逆に利用した戦略の勝利です。
Apple製品が業務用端末として普及するやいなや、対応する業務アプリケーションも拡大しました。それにより開発会社やSierも顧客の環境を知るためにiPhone/iPadを導入する、というAppleにとって願ってもないスパイラルを産みました。
しかしそれにより困ったのは現場の社員ですね。使い慣れない端末の操作を頑張って憶えないと、グループウェアも使えずに業務に支障をきたすのですから。
「iPad/iPhone/Androidで遠隔会議」する場合に必要なこと
卵が先であれ鶏が先であれ、この場合に心得るべきこと、及び会議システムを選択する際に注意することは何でしょうか。
カメラ画質
カメラはデバイスにくっついているので、性能はその範囲に限られます。
最近のデバイスであれば画素数のスペックが問題になることは無いでしょう。
問題になるとすれば、映像が暗い、相手に送られている映像を確認しにくい、など使い方の問題が多いです。
音質
外部スピーカー・マイクでは野外の雑音や風の吹き込みなどでとても使えたものではありません。
ヘッドセット・マイクが必須となります。
Apple製品であれば付属のEarPodsでも十分使用に耐えます。
使い勝手も含めてそれ以上を求める場合は、Bluetoohでの接続が可能なヘッドセットマイクが良いと思いますが、距離や対雑音性などは十分に確認が必要になります。
インターネット回線
これが大問題。
ベストエフォートで場所によってさえ不安定なモバイル回線でも快適に使用できる必要があります。
最高速度で言えば、LTEなど4G回線により回線速度は指数関数的に向上してはいますが、ネックは不安定さです。
最低でどのくらいの回線速度で動作させることができるかを明確に提示している製品を選ぶべきです。
LINE電話など、インターネット回線を利用した音声通話サービス(VoIP)が普及していることを考えても、音声はもともと帯域をさほど食わない上に、多少明瞭度を下げれば低速回線でも問題ありません。
主に帯域を食うのは映像のほうですが、モバイル端末の小ぶりな画面での使用において特に高画質の映像が望まれるケースは少ないでしょう。
したがって多くの商品は映像品質を低下させることで低速回線でも動作できるようにしています。
これらをふまえて、最低500kbps程度でも使えるかどうかが一つの目安であると筆者は考えています。
(推奨が「1Mbps以上」などとなっていていも、「最低」をチェックしましょう)
また、回線速度に関して以下の機能を持つ製品を選択しましょう。
「低速モード」など、手動で低速回線時の音声・映像品質を固定できる
そのモードのときにどの程度映像が荒くなってしまうのか、事前に評価しましょう
または自動で回線状況に合わせてリアルタイムに品質が最適化される
この場合には過去一定時間の状況に基づいた予測により次の一定時間の品質が決定されることになるため、速度が不安定な回線では最適化が難しい場合があります。そのときは手動で固定することもできることが必須となります。
通信回線の状況をリアルタイムで画面上で確認ができる
どこかのメニューを選択しなくても常に画面上で確認できることがベストです。
操作性
回線と並んで重要なものがこれです。
ソフトウェアの使い勝手(UI)については、別記事でも記述しているようにどのような端末でも重要になってきますが、特に製品によって差が出るのがモバイル端末です。
いまどき、iOS、Androidに「非対応」のテレビ会議システムは皆無と言えます。
しかしながら、何をもって「対応」としているかは各製品によって大きく異なり、ユーザーの思いと乖離している場合も多くあります。
これはスペック表には表れにくい部分で、注意が必要です。特に下記のポイントを押さえましょう。
固定端末での操作性と、モバイル端末での操作性が近いこと
会議室のPCから参加する場合とiPadから参加する場合で、メニューの位置やボタンの配置が全く違っていたりすると、「使い方をおぼえる」というただでさえ煩わしい作業の苦労が二倍になっていまいます。
モバイル端末の機能的な制限事項が少ないこと
PCや専用機ではできる機能の一部が、モバイル端末のみ限られるというケースがあります。
- 会議主催者としての機能が制限される
- 会議作成・削除ができない、開始・終了ができない、他者を招待できないなど
- 共有された会議資料データの操作に制限がある
- 端末のローカルに保存できない、メモを書けないなど)
- 最大数の仕様に違いがある
- 一度に表示できる他拠点の映像数が少ない
こういった制限はよくあります。
割り切れる制限であれば問題はありませんが、ユースケースとして致命的になってしまうポイントが無いかどうかは十分に検証が必要です。
開発を担当しているメーカーの人間ですら忘れてしまっているような一見細かい制限が、使う人にとっては思わぬ惨状をもたらしたりもします。
まとめ
細かいポイントを挙げてきましたが、まずはモバイル端末での会議がどれだけ頻度があるのか、重要視されるのかについて業務用権を定義した上で、割り切れる機能とそうで無い部分を整理する必要があります。
「うちの製品もiPhone対応してます!」などという単純な言葉を鵜呑みにしてはいけません。
WEBもモバイルファーストが言われるようになりましたが、テレビ会議システムも、モバイルを第一に考えている製品とそうでない製品で、特に使い勝手に大きな差が出ています。
ここで挙げた内容のほかにも、製品の成り立ちや導入事例などの情報も得た上で、それを見極められるようにがんばりましょう。