目次
WEB会議?テレビ会議?
遠隔会議システム導入にあたって最初に検討しなければいけないのが「テレビ会議専用機かWEB会議か」です。
最近はその中間的なジャンルも登場していますので、まずはどんなジャンルがあるのか、用語の定義をしたいと思います。
テレビ会議 |
複数の遠隔地間で、リアルタイムに音声と映像を送受信し、 コミュニケーションを実現するシステム。後述の「WEB会議」「テレビ会議専用機」を含む総称。 海外では「ビデオカンファレンス」と呼ばれることが多い。 |
テレビ会議専用機 (略称:専用機) |
古くから存在するジャンルで、機器本体に加え専用のマイクスピーカーを備え、TVなどのディスプレイに相手のカメラ映像やPC映像等を出力するシステム。
2拠点以上の複数拠点での同時会議のためには、別途、「MCU」と呼ばれる高価なサーバーが必要。 接続ネットワークは専用回線を前提としていたが、近年の共用回線のブロードバンド化や映像・音声圧縮技術の発達により一般のインターネット回線でも利用可能とうたわれることも多い。主に機器の買取またはリース契約で利用される。 例:Cisco/Sony/Polycom/LifeSize/Avaya/Vidyo などのビデオ会議 |
WEB会議 | PCのブラウザや専用ソフトにて双方向コミュニケーションを実現するシステム。
一般のインターネット回線で利用できることを前提とし、マイク・スピーカーやカメラはUSB接続による民製品を利用することが多い。 利用するには、主に月額や年額ライセンスを利用者数や拠点数だけ契約する必要がある。 例:V-CUBE、Web-Ex(Cisco)、LiveOn(ジャパンメディアシステム)など 更に、このジャンルではサーバーを外部で管理させる「クラウド型」と自社内で管理する「オンプレミス型」という大きな分岐点がある。(別記事参照) |
専用機型WEB会議 | 技術的な仕組みはWEB会議そのものだが、特定のハードウェア(本体、マイクスピーカ、カメラ)を使用するタイプのもの。 心臓部に当たる本体は「STB(セットトップボックス)」と呼ばれることが多い。民製品を組み合わせてパッケージ・キッティングしただけのものもある。 例:ユニファイドコミュニケーションシステム(リコー)、Chromebox for meetings、V-CUBE BOXなど |
相互接続サーバー/サービス | 専用機の会議にWEB会議スタイルでPCから参加できる、またはその逆でWEB会議に専用機から参加できる仕組み。
音声・映像データの圧縮方式(コーデック)の相互変換が必要となるため、別途サーバー導入やゲートウェイサービス契約が必要となる。 各主要専用機ベンダー、WEB会議ベンダーの多くがオプションとしてメニュー化している。 |
はっきり言ってとてもわかりにくく複雑です。
詳細な内容は「web会議 テレビ会議 違い」などでWEB検索すると山ほど出てきますのでそちらに譲り、ここでは言葉の定義と簡易説明のみにとどめます。
では、この混沌の中で、専用機とWEB会議のどちらを選択すべきか?の判断材料を書きます。
細かいポイントは書き出したらきりがないので、致命的な要素に絞ります。
予算が厳しければWEB会議
本当は最も理由にしたくない「予算」ですが、いくら上司に主張してもどうにもならない場合は、WEB会議の方が安く済みますので、その選択肢しかありません。
専用機の費用感
いくらくらいが目安かというと、専用機の場合はざっくりと、
- 1カ所あたり 50万円〜100万円 × 1.15×使用年数
くらいと思ってください。係数の1.15は、保守費用の分です。
だいたい本体費用の10~15%で想定します。これがばかになりません。
例えば4カ所の会議を5年やりたい場合はおおよそ600万円〜1,200万円となります。
大型モニタに接続したい場合は当然それだけ加算されます。
更に、4カ所の接続自由度を上げる場合にはMCU(※上記「テレビ会議専用機」定義参照)も必要になり、更に1,000万円以上の追加になることもあります。
さらには回線もあります。帯域保障型かベストエフォート型かでまた費用が変わりますが、いずれにせよテレビ会議用に別途要することになるでしょう。
これらの費用を5年でリース契約するとしても、単純に年額1/5でさらに金利が乗りますから、結局年間数百万円ということになるわけです。
何も知らない上司なぞに報告する羽目になった場合には「高っ!」と一蹴されるでしょう。
しかしこれが高いかどうかは、決裁者の捉え方次第です。
導入により出張費が削減できるとか、コミュニケーションが円滑になって業務効率が上がるとか、損とはならない理由を並べる必要があるのが、この記事を読む方の立場かもしれませんね。
WEB会議の費用感
一方、WEB会議の場合は、その多くが月額のランニングコストとなります。
PCを含めたとしても
- 1カ所あたり
- 【ライセンス】:5,000円〜10,000円×12ヶ月×使用年数
- 【マイクスピーカー】:30,000円〜100,000円
- 【WEBカメラ】:10,000円〜100,000円
くらいが相場となります。マイクスピーカーやカメラに保守をつけたとしても1カ所あたり、年間10万円オーダーで済むでしょう。専用機の1/10程度です。
しかもここでの例示は、あくまでビジネス用途の有償ソフト及びハードウェアを利用した場合の「固い」設定です。
フリーのskypeもしくは使用中のグループウェア付属のものなどを利用し、iPhoneで付属のマイク付きヘッドフォンを活用すれば、追加投資ほぼゼロで実現できる場合さえあります。
(ただし安物の音響機器を使うと、ストレスだらけの最低な会議になるので、安かろう悪かろうになってしまうか、コスパ最強!となるかはやり方次第です。下記記事参照。)
なお、社内セキュリティ規準の問題で、一般回線のクラウドサービスを利用できないという場合は、専用機または「オンプレミス型WEB会議」となります。
WEB会議でもオンプレ型で保守料が入ってくると専用機とほぼ変わらない値段になってきます。
ただしそこまでセキュリティが厳重であるのは、ここで話題としているコストについては二の次という企業に限られるはずです。
簡単に使いたいならテレビ会議専用機
WEB会議はあくまでPCの世界なので、ソフトウェアを直感的に操れる人でないと厳しいです。
安さ重視でWEB会議を推し進めたものの、使われず失敗する例が後を絶ちません。
ライセンスの無駄となります。
ましてや、汎用マシンで動かすということは設定や動作の癖も千差万別であり、サポート担当者の悩みどころともなります。
WEB会議の「使いやすさ」については、次の記事で取り上げます。
一方、専用機は、リモコンによるテレビ操作で電話をかけるような操作感ですので、60歳台のおじさんや20歳台のスマホしか知らない新人類でも対応できます。
つまり、使う人のリテラシーが低い場合は、専用機一択となります。(嫌な言い方ですが…)
音とカメラ映像品質重視ならテレビ会議専用機
専用機はただでさえ高価なハードを積み、バッチリ評価されたマイクスピーカとカメラ。
それでいてきちんとしたネットワークさえあるのなら、音と映像に関してはある意味安さと引き換えにそれらの妥協点を探っているに過ぎないWEB会議システムと専用機とは雲泥の差が出て当然です。
では具体的にどんな利用シーンが当てはまるでしょう。
品質が求められる利用シーン
- 役員会議
- 複数支店間をつないだ定例進捗会議
- 全国一斉全体朝礼
つまりは、「ちょっとマイクを調整しますんで少し待ってくださいね〜」などと気軽に言えそうにない、失敗できない、頓挫が許されない会議です。
逆にそれをWEB会議でやろうとしたらどれだけ入念な準備とリハーサルが必要か・・・ほかの記事も合わせて読んでいただければその苦労は理解いただけると思います。
PC/スマホ/タブレットならWEB会議
専用機はあくまで専用ハードウェアですので、例えば会議室に固定して設置するなど利用場所が限られます。
ときには取り合いになったりするので、自席や出先から会議したいというのはよくあるニーズです。
後述のような「専用機のしがらみ」がなく、Skypeなどを使ったことがあるような利用者であれば、もはや特別なこだわりがない限りはWEB会議で問題ありません。
しかし、基本はWEB会議にしたくても、「専用機のしがらみ」が発生する場合があります。
どうしても専用機を織り交ぜないといけない状況にあるユーザのために、専用機とPC・モバイル端末の両方で同じ会議に参加できる製品やオプションもあります。
(上で用語定義した「相互接続サーバー/サービス」がこれに当てはまります。)
専用機とPC/モバイル端末の両方で会議したいケース
- 専用機を既に導入しており、拠点が増えたため追加したい。しかし高価なので新規拠点はWEB会議としながら、既存の専用機との間でも会議したい
- 利用中の専用機が順次リース切れし減少していく。WEB会議に一度に総入れ替えするのはハードルが高いので、リース契約が残っているところは継続して専用機で会議したい
- 協業先と遠隔会議が必要で、一方が専用機を持つが、一方は専用機は無くPCなどで参加したい
こういったしがらみが発生した場合には、「主体」をどちらにするかによって選択する製品が変わってきます。
WEB会議に専用機を参加させる
この場合には専用機を「WEB会議に呼び込む」オプションサービスを持ったWEB会議製品を選択する必要があります。
大手のV-Cubeなどのオプションサービスにもありますが、何らかの機能制限がつくことを覚悟しなければいけません。
専用機側では会議設定や主催、参加操作ができない、発表者権限の取得・譲位がPCほど自由にできない、WEB会議でやりとりされているPC画面は見ることができない、(当然ながら)シェアされている画面に書き込んだりソフトを操作したりできない、などなど。
しかし、一番の問題は価格です。
WEB会議と専用機の会議は通信プロトコルや映像・音声圧縮技術も異なるわけですから、それを変換する「ゲートウェイサーバ」というものが必要になります。
それを1社専用で用意したらたいへんな価格になるので、WEB会議メーカーはそれを複数社でシェアする前提で、どのくらいそのオプション契約が取れるか皮算用し、ユーザー価格に落とし込むことになります。
それは、WEB会議のライセンスを一つ追加するよりも遥かに高い追加費用が必要になるでしょう。
そこまでして手持ちの専用機を活かす必要があるのか?
行動経済学にはサンクコストという言葉がありますが、過去の遺産に縛られて未来を制限することにならないでしょうか。
キッパリ捨ててWEB会議のライセンスに置き換えたほうが特だしわかりやすくないか?
よく検討しましょう。
専用機の会議にPC/スマホから参加する
あくまで専用機での会議ありきで、たとえば会議室に同席することができない人が出張先から参加するとか、そういったケースが当てはまります。
この場合はとてもシンプルな話で、契約している専用機側のサービスに、PCソフトやスマホアプリから会議参加するためのオプションがあると思いますので、それを契約します。
この場合も、ゲートウェイサーバーなどの裏の仕組みは似たものかもしれませんが、専用機を1台追加するより価格が高かったら本末転倒ですから、きっと相対的にはリーズナブルに感じる追加費用で実現できるはずです。
注意点を挙げるとすれば、それはあくまで専用機の会議に特殊な経路で参加しているに過ぎませんから、これからもずっと専用機を使っていくことが前提です。
いずれWEB会議に移行したいという考えがあるのであれば、専用機の仕組みにどっぷり囲われていくのは最善ではないかもしれません。
インタラクティブな映像共有が必要ならWEB会議
このケースでは、かなり具体的な使い方が想定されます。
インタラクティブ性が求められる利用シーン
- 特定のアプリケーションを会議相手にも操作させたい
- 議事メモや板書を遠隔拠点間で書き込んで共有したい
つまり、一方的に社長の挨拶を拝聴するなどの用途ではなく、互いにはたらきかける密なコミュニケーションが利用シーンとなります。
具体的には、
- 製品仕様や設計について技術者どうしが特定のアプリケーションを共有して侃侃諤諤と議論する
- エクセルを見せながら接続先の相手にリモート操作させる
- 緊急対策会議で時系列に互いのアクションを記述して時には遠方に指示する
などがあるでしょう。
こうなると音声品質や相手の顔の映像というよりは、「資料共有」がキーとなります。
利用可能デバイスの多様さや場所を選ばない自由度から考えても、WEB会議の選択がベターとなります。
ただし、「映像共有」「資料共有」に重きを置いた使い方をしたい場合には、本当にやりたいことがスムーズかつ簡単に実現できる製品を慎重に選ぶ必要があります。
別記事もご確認ください。
ここまで読んで、自分に当てはまるのが「専用機」なのか「WEB会議」なのか、イメージはついたでしょうか?