3大要素で決める

WEB会議・テレビ会議が無料ツールで良い訳、いけない訳

「フリーソフトで良くない?」は企業では禁句なのか

ここではWEB会議ジャンルに絞って話をします。
専用ハードウェアを要する「テレビ会議専用機」で「フリー」というものは今の所無いと思いますので。

これだけWEBサービスやフリーソフトで無料サービスに慣れ親しみその恩恵を甘受しておきながら、ことWEB会議・テレビ会議となると、フリーソフトの利用を企業では怪訝されるきらいがあります

そもそも、パブリッククラウドの利用自体がNGとされるような、超・情報統制企業であれば、それは言うまでもありません。

しかしながら、有料のパブリッククラウドサービスはOKであっても無料のものはNGとされるとなると、その理由の正当性を述べるのは少し難しくなります

サービス提供が保証されない?

これは一見まっとうな理由です。
確かにフリーソフトの場合は、提供側がいつサービスをやめても、急に有料化されても文句は言えません。
つまり、3年、5年と継続的な利用を前提としたい場合にはフリーツールは向かないことになります。

しかしながら、有料サービスであれば保障されるのかといえば、なんら法的な拘束力は無い場合が多いのが現実です。詳しくは下の別記事をご覧ください。

そのため、サービス提供責任を利用規約で述べているような超レアな一部サービスを除いては、このことが有償サービスを選ぶ理由にはなり得ないのです。

では、規約で明記されない限りはフリーと変わらないのかといえば、実質的にはそうでないでしょう。
無料サービスと違って、お金を徴収してサービスを展開している限り、文面には記さずともサービスを安定・継続的に提供しなければならないと考えるのがまっとうな企業でしょうし、それがSIerやメーカー営業からの提案によるものならば、営業担当者、及び連帯するメーカーの社会的責任は免れないと思うでしょう。

その社会通念にどこまで期待するかは、選択する人次第です。

少なくとも言えるのは、サービスの継続は保障が難しくても、有償であることによって得られる、利用継続性に関連したサービスがあります(ときには規約で明記される場合もある)。

  • 導入時やアップデート時に、一般非公開のマニュアルや技術資料を提供してもらえることがある
  • 大幅なアップデートがある場合には数ヶ月前などに変更点を案内してもらえる
  • サービスが終了する場合は半年前などに案内してもらえる

こういったサービスは大げさに言えばメーカー最後の良心といったところです。
「有料なんだからそのくらいしてくれますよね?」なんて言い方は角が立つしても、最低限の権利として購入前に約束をとりつけてもおかしくはありません
だって技術だけで言ったらほとんどは無料サービスで十分なのですから。

品質が悪い?

無料ソフトは品質が悪い、そんなものを導入したら苦労する、ただほど高いものはない。
そう思われがちです。

これはある意味当たっている部分もあれば外れている部分もあります。

無料でツールを提供するような会社はどのようなところでしょうか。
ひとつは新技術をいち早く取り入れて先行者利益を狙う、小回りの効くベンチャー企業。
もしくは他サービスなどで確固たる立場を確保している巨人が新規事業として後発者利益を狙ってくる場合があるでしょう。
WEB会議分野では前者がかつてのスカイプ社ならば後者はハングアウトを無料提供するGoogleでしょうか。
近頃はHTML5とWebRTCを活用した「appear.in」という無料サービスが高評価を得ています。

普通に考えてわざわざ後発にフリーで勝ち目のない勝負はしないわけで、となるとフリーだから「品質が悪い」とは考えにくい事に当たり前に気づくと思います。

ただし、WEB会議の場合は、サービス(製品)単体だけで「品質」は評価できない点が重要です。

ソフトそれ自体のほかに、音響機器との相性、保守、他ソフトとの連携(※)、業務形態とのフィット感、などのトータル要素で「Web会議の品質」が決まると考えます。
フリーである事によって、このあたりのフォローにコストがかけられないことはおおいにあるでしょう。
その場合には、いくら機能単体では優れていても、「品質が良い」とは言えません。

※GoogleハングアウトやMicrosoft Skypeのように、他の同社サービスを有償利用していることで無償で使えて横連携できるフリーツールは大きな強みを発揮しとても魅力的ですが、会員登録やIDを作らないといけないなど、囲い込み戦略故に利用に手間が発生する点は注意が必要です。

セキュリティが不安?

フリーソフトに対する定番の懸念に「セキュリティ」があるでしょう。
ですが「セキュリティ」というのが何について言っているのか?を突き詰めて考えてみる必要があります。

通信経路上のデータ漏えいに対する懸念

SSLによって暗号化通信がなされることは当然であり、フリーツールであってもさすがにそれは実現されていることでしょう。
つまりは、公共の通信回線を使用している限り、データが傍受されることが前提であり、傍受されても内容が解読できないようになってるということです。

ただし、通信経路上でデータを傍受され、しかもSSLによる暗号化が解かれたとしても、エンドツーエンドで更にソフト的にデータを独自に暗号化しているという仕組みを持つ製品もあります。
それはひょっとすると有償か無償かで差があるかもしれませんが、そもそもそこまで必要か?については議論の余地があります。

SSLが解かれるということは、我々がショッピングサイトでクレジットカードの番号などをやりとりしている情報も抜き取られうるということと同意です。
そのような、現在世界で大前提とされる根本技術の崩壊を条件にした上での対応を迫る必要があるでしょうか。

(サービス側データセンター内にて SSLアクセラレータにより暗号化が解かれ平文で転送される仕組みがあったとして、内部ネットワーク経路での漏えい、という点まで考えれば意味があります。しかしそれこそセキュリティ上、データセンター内の詳細なサーバー構成まで公表しているサービスなど無いでしょう。独自に暗号化していてもSSLよりは脆弱だと思いますから、そのような欠点はあっても晒しません。)

サーバー上の保管データ漏えいに対する懸念

これはフリーか否かで取り組みに差が出る部分であると考えます。

サーバーが物理的にどの国に存在しているのか

Amazonのサーバーが世界中で稼働している今にあって、この点は気にするに値しないという捉え方もあるでしょう。
しかし、サーバーもあくまで人が管理するものであり、スタッフの悪意という人為的な原因でデータ漏えい事件が数多く発生している現状をみると、まだまだ無視できる要因とはならないと私は考えています。

サーバー管理体制

いくら日本国内の名のある大手がサーバー管理しています、ということであっても、則っているセキュリティ管理基準が低ければ何の意味もありません。
私も含め素人にはなかなか難しいかもしれませんが、客観的な指標に則って厳正に管理されています、ということをきっちり公表しているサービスならばより安心できるでしょう。

AmazonのAWSでも、厳しい基準とされるFISC安全対策基準の各項目に対してどう対応しているかをきっちり自サイトで公表しています

このような、サーバー管理体制について公表している資料はありますか?なんて質問をメーカーにぶつけてみたらよいと思います。
フリーツールとなるとなかなかここまでの配慮は難しいのではないでしょうか。

サーバー上でのデータの暗号化有無

上で触れたとおり、いくら管理体制が厳粛であっても、そもそもの管理者が悪意を持っていれば防御が難しい場合もあります。
また、万が一にネットワークへの不正侵入によりデータがコピーされたということがあった場合にどうかということです。

その万が一の場合に備えて、せめてストレージ上でデータが暗号化されて格納されているかどうかが次の確認ポイントです。

この暗号化はソフト開発者にはけっこう負担です。ログ出力してデバッグするにもデータが暗号化されていると作業効率が悪くなります。それ故に覚悟が要るのです

今時フリーツールでもそのくらいしているとは思いますが、本当に重要な社外秘の機密データを保管するような可能性があるのであれば、確認したほうが良いでしょう。

「セキュリティ」にそこまでこだわるならばパブリッククラウドサービスは使えない

結局このような結論になります。
こだわる場合は、オンプレミス型でサーバーを自社管理しつつ、専用回線で利用するという一番コストのかかる方法を取るしかないのです。

これは提案する側の立場の話ですが、クラウド型サービスについていろいろとセキュリティの懸念をつっこまれ、「じゃあそもそもクラウドはやめたほうが良いのでは?」という禁句が喉元まで上がってきた経験を持つ営業も少なくないでしょう。

選ぶ側としても無駄な時間を費やさないよう、セキュリティ上譲れない根本的な部分を明確にして、きっちり前さばきしておきましょう。

試してみたいフリーツール3選

以上に挙げたような「フリーソフトに対する懸念」について考えた上で、「うちはフリーでも大丈夫そう!」となったときに、試してみてもらいたいフリーのWEB会議ツールを挙げます。

Whereby

HTML5の機能を使った純粋WEBアプリ。
IE及びSafariを除くWebRTC対応ブラウザであれば別途プラグイン等のインストール不要で利用できます。

※以前は「appear.in」という名前で完全無料のみのお試し的なサービスでしたが、2019より名前がWherebyに変わって有償プランが出ています。
以前はアカウント不要!というのが一つの魅力でしたが、今はアカウント作成が必要です。とはいえ、Chromeアカウントが使えたりなど、利便性は確保しています。

どうやら有名な電話会社の製品だったようです。
なにせ簡単に使えるのが魅力です。

使い方等はこちらのサイトが詳しいです。

Google ハングアウト

言わずと知れたGoogleのコミュニケーションツール。

Googleにアカウントを持つことが前提となります。
ブラウザでの利用にはHangouts プラグインが必要となります。

GmailやGoogleカレンダーなどのGoogleサービスを企業で使うケースも増えてきていますので、その場合はそれらと連携するツールとして当然ハングアウトが大きな選択肢となります。

また、企業としての圧倒的な地位、資金力。さらには超優秀なスタッフ、マネージャー。
これは何よりのアドバンテージです。
こんなすごい機能がこんな料金で?という驚きを今後もGoogleはもたらすことでしょう。

Skype

ビデオチャットの代名詞スカイプ。
Microsoftに買収され、Windows等のMS製品との連携・親和性が高くなっています。
利用にはやはりアカウントが必要。

とはいえ世界中で知られるその知名度により、有用性に疑念が持たれないのがメリットです。
老舗らしく気の効いた使い勝手で、音質などの基本機能も、とりあえず「あの有名なSkypeでこんなものだから、何を使っても大差無いだろう」と思ってもらえること受け合いです。
乱暴に言えば、とりあえずSkypeと言っておけば、否定される理由が少ないということです。

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