3大要素で決める

実は真っ先に確認が必要なテレビ会議・WEB会議の「利用規約」

テレビ会議・WEB会議の「利用規約」とは

PCで各ソフトウェアをインストールする際に必ず表示されるのが「利用規約」です。
これに同意しないとインストールすることができません。

ライセンス規定や製造物責任を意識した免責条項などについて書かれるのが通例です。

当然ながら、テレビ会議にも利用規約がありますが、サービス形態によって内容や提示のされ方は様々です。

この「利用規約」、「どの段階でどのような文書が提示されるか」について気にして製品選択をしているでしょうか。

もしあまり気にしていなかったとすれば、企業で遠隔会議システムを導入する上で、実は十分に注意が必要であるということを知ってもらいたいです。

テレビ会議にまつわる規約・規定の種類

まずはどのような契約文書があるかを挙げてみます。

サービス利用規約

WEB会議・クラウドサービスであれば必ず提示されます。

契約/解約方法や、瑕疵責任の所在・禁止事項などの、製品利用の手続きや法律的責任範疇などのいわゆる「契約ごと」に絞って書かれたものもあれば、提供される機能・ライセンス体系・費用・保守などのサービス内容そのものを定義していることもあります。

逆に機能・ライセンス・保守契約については別紙参照とされる場合もあります。これらもまとめて「サービス利用規約」の仲間と考えて漏れないようチェックが必要です。

ハードウェア保証規定

テレビ会議専用機や専用PC(セットトップボックス)が伴う場合は、ハードウェアの取り扱いについて書かれた書面が付属するでしょう。

たいていは動作保証環境・期間や、保守があるとすればどのような内容になるのか(オンサイト修理・センドバック修理、修理パーツ保持期間等)が提示されます。

もし「利用ライセンス」がハードウェアに付随したものであれば、利用ライセンスが規定される場合もあります。

テレビ会議の「利用規約」が提示されるタイミング

次に、契約文書が確認可能なタイミングについてパターン分けします。

どうしてタイミングが重要なのかは後述します。

いつでも閲覧できる

WEBサイトなどで堂々と公開されており、常に最新版をユーザー自身が取得できるパターンです。
一番常識的・良心的なメーカーと言えるでしょう。

いくつかリストアップしてみます。

  1. V-Cube
  2. LiveOn
  3. Meetingplaza
  4. X-Sync Prime Collaboration
  5. Mora

サービス提供元への問い合わせ〜注文前に閲覧できる

当然、契約内容の確認は購入の判を押す前に確認が必要なので、このタイミングがデッドラインです。

ですが、事前に担当営業者から口頭で説明を受けたりパンフレットやWEBサイトなどで機能について十分に理解ができたことにより、正式な契約書面に目を通さなくても、パソコンを買うような簡易的な注文書のみで発注をかけてしまう恐れがあります。

本来であれば、買う方が特に注意しなくても、サービス提供側がユーザーと契約する上での一連の流れの中で各種規約は提示され、その同意が無いと注文に至らない仕組みが構築されているべきです。

しかしながら、文書の整備が不十分であったり、販売する営業がハコ物感覚で「サービス」を売っていたりする「利用規約を読んでいないのに注文してしまった」ということがあり得るのです。

仮にこのような状況だったとしても、必ず事前に担当営業に対してPDFや紙面での利用規約の提示を要求しましょう。

注文後に初めてその存在に気づいた!

本来あってはいけませんが、注文してから初めて契約文書の存在に気づく、というパターンもあります。

  • 購入後、いざソフトウェアをインストールしようとしたら「利用規約」が表示され、その内容について初めて把握した。
  • 購入後、送付されてきたハードウェアの箱を開けたら利用規約が記載された紙が入っていた。読んでみたら、保証規定に思っていた内容と齟齬があった。

ひょっとしたら、ユーザー側の製品の選定・購入担当者であれば、導入することが仕事であり、後々の細かいことは後回しと思ってしまうかもしれません。

しかし故障やトラブルは利用開始直後にも発生する可能性があるわけですから、その際に保守条項と付き合わせた結果、メーカーに何もやってもらえないことがわかり途方に暮れるということもあり得るのです。

つまり、導入時に苦労が一つ増えることになるとは思いますが、購入前に利用規約を社内の有識者や法務担当者などに吟味してもらう必要があるのです。

テレビ会議の利用規約で注視すべきはどこか

まずはポイントを絞る

これまでいくつか具体的な項目にも言及してきましたが、それらのうち自分がどこを気にしなければいけないかは「ビジネスインパクト」次第となります。

当然ながら業務への影響が大きいほどチェックポイントは多くなり、少なければ気にしなくても良いくらいのものになります。

サービス停止に関する記述

サービス提供時間は何時から何時なのか、定期的にサービスが停止するタイミングがあるとすればいつなのかについては、利用規約というよりはサービス内容を定義した別文書やカタログなどで早々にチェックしているかもしれません。

しかしそれはあくまでサービス提供側の「努力目標」にすぎず、不具合発生による突発的なサービス停止についてはどういう扱いになるのかについて記述があるか確認しましょう。前述の公開されている利用規約の中からいくつか例示したいと思います。

まずはMeetingplazaです。

第41条  責任の制限

1
当社は、第40条に定める場合を除いて、遠隔会議サービスを提供すべき場合において、当社の責めに帰すべき理由によりその提供をしなかったときは、その遠隔会議サービスが全く利用できない状態にあることを当社が知った時刻から起算して、120時間以上その状態が連続したときに限り、その契約者の損害を賠償します。

次にX-Sync Prime Collaboration

14 本サービスの料金の精算について 

14.1
お客様が本サービスの全部又は一部を利用することができない状態が連続して 24 時間以上にわたって継続した場合、PVC は、お客様の請求を受けて、本条に基づく本サービスの料金の精算を行います

ここで挙げた二つの例は、事前予告されたメンテナンス等以外で利用できない時間が特定値を超えた場合には返金するということが書かれています。

もちろん、金を払えば良いだろうと開き直って長時間停止されても文句は言えませんが、お金を返すというのはメーカーとしても大きな壁の役割を果たすでしょうから、復旧のデッドラインを言っているものと認識してもよいでしょう。

このように、障害復旧時間の目安を挙げてくれているサービスはどちらかというと珍しく、非常に良心的と言えます。

ミーティングプラザは、さすがはNTT系ということで厳しい顧客を抱えているのだろうなと邪推したくなりますが、120時間というのは長く感じますね。

一方でパイオニアVCのほうは、24時間と、とても素早い対応が期待できることがわかります。あくまで推測ですが、自社で技術者をかかえていて素早く待機系に切り替えできるなどの体制も確保されているのでしょう。

では他の製品はどうかというと・・・

9 免責について

9.1 本サービスは、「現状有姿で」提供されます。V-cube は、本規約で明示的に規定する場合を除き、明示的か黙示的か、法令又はそれ以外に基づくものであるかを問わず、本サービス及び/又は本ソフトウェアの継続性、通信の完全性及び確実性を含む信頼性、可用性、利用可能性、セキュリティ保護性、無エラー性、無ウイルス性、不具合修正の確約、商品性、品質満足度並びにお客様の特定目的への適合性を含むいかなる種類の保証も行いません

9.2 本サービス及び/又は本ソフトウェアは、以下の事由により快適に利用できないことがあります。その場合、V-cubeは、本サービス及び/又は本ソフトウェアが快適に利用できないことによりお客様に発生したいかなる損害についても、一切の責任を負いません。(以下略)

何の保証もなく責任は取りません、金も返しませんということですね。

提案してきた担当営業はどう言うかわかりませんが、法の及ぶ責任のもとでは結局そうなんだなと思ってしまいます。

しかしながら、ビジネス向けをうたっておきながら、こういう記述がなされたソフトウェアがいかに多いことか。唖然とする他ありません。

サービス終了時の通知についての記述

遠隔会議ツールを業務に欠かせないものとして利用している場合に、サービス提供側の都合でそのサービスが終了されてしまうと、会社としても無視できない問題になります。

もちろん他のサービスに乗り換えれば良いのですが、使っていたものが各社員に深く浸透していたり、また他のグループウェアと連携しているなど、簡単には乗り換えできないケースもあるでしょう。

その場合には、もちろん企業の規模にもよりますが、最低でも半年、できれば1年くらいの移行期間が欲しいところです。つまり事前に通知してもらう必要があるわけです。

ビジネスパートナーであれば、常識としてそのような配慮は当然とも思うところでしょう。

ですが、そのあたりがきっちり規約に書いてあるかどうかというのは安心感に大きな違いを生みます。

先の具体例からいくつか見てみましょう。

まずはMora。

第15条 本サービスの廃止

1. 当社は、都合により本サービスの全部または一部を永続的に廃止することがあります。
2. 当社は、前項の規定により本サ-ビスを廃止するときは、契約者に対し廃止する日の 30 日前までに通知します。 ただし、緊急やむを得ない事情により本サービスの全部または一部を廃止する場合については、この限りではありません。
3. 第1項及び、第2項の場合、当社は契約者に対し、一切の責任を負わないものとします。

最低の期日とはいえ、30日前というのは正直急過ぎますね。

せっかく誠実に期日を書いているのですが、中小企業でも不可能なスピード感です。

次にV-Cube。

13 本サービスの終了について

(中略)
13.2 V-cube が本サービスを終了する場合、V-cube は、原則として6 か月前までにお客様に通知します。

なお、LiveOnやxSyncPrimeも同様に6ヶ月としていました。ミーティングプラザは「あらかじめ」通知する旨の記述にとどまり、期間は特定していませんでした。

なお、ここでは「サービスの廃止」のみを取り上げましたが、欲を言えば、大幅なUI変更などのアップデートがある際にも、事前の通知が欲しいところです。

大事なミーティングの直前に、急に画面が変わってしまったり、プラグイン更新に時間がかかってしまったりなんてことがあっては、思わぬ惨事を生みかねません。

とはいえここまでの細かいことは利用規約までには書かれないでしょうから、そういう配慮をしてもらえるのかどうかをきちんと契約前に確認し、できればメールなどの文面に残すことが必要です。
(契約書や発注書の備考欄などに担当営業から一筆もらえればベストでしょう)。

まとめ

本記事では、公開されているWEB会議サービスの利用規約を具体的に引用し、「ビジネスインパクト」という観点から、特に着目したい項目をいくつか挙げました。

しかしながら、利用規約に書かれる範囲は商品によって様々です。

法的効力を持ちうる文書として契約面や抗争等最低限の記述のみとされる場合もあれば、料金の支払い方法などの金銭面、さらにはID管理規定などサービス運用面など幅広く書かれる場合もあります

「利用規約」の更新は法務部門含め会社として影響が大きく更新しずらいため、運用面・機能面は切り離して別文書とする例が多いです。

それ故に、ここではほぼ共通して書かれるであろう一部の要点を挙げるにとどまりました。

より実際には、利用規約を含めたサービスを定義する文章群全体によって、サービス内容や決まりごとができるだけ具体的・明確に定義されていること確認する必要があるでしょう。

カタログや営業の口頭での説明だけでなんとなく納得するだけでなく、それがどの文書にどう明記されているかを確実にチェックすることが必要なのです。

また、実際の業務で使用している状況を思い浮かべながら、「もしこんな事態になったらどうなるのだろう」「こういう問題が発生したら責任を取ってもらえるのか」など、リスク管理の観点からアプローチし、それがどの文面から読み取れるか確認するのも良いでしょう。

読み込むのが面倒だからと斜め読みだけでスルーすることなく、機能面と同じくらい大事なものと考えることが必要です。疑問があればメーカーに確認しましょう。

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