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言ったもの勝ちの「直感的な操作性」
かつて日本の高機能なガラケーが一世を風靡しているときには、日本の携帯開発者はこぞって「iPhoneは使いにくい」と思いました。
確かに、初期iPhoneはコピペができなかったりといった、そもそもどうかと思う仕様はありましたが、その他にも「物理キーが無いとテンキーが打ちにくい」とか「ワンセグ、FeliCaが無い」とか、確たる人気を得た今でも変わらない仕様についても当時はボロクソ言われていた記憶があります。
しかしiPhoneが目指したのは「人間の感覚にフィットし、操作して心地よいUI」だったようです。
瞬く間に世界の共感を得たのはiPhoneのほうでした。
これに懲りてから、日本のメーカーも「直感的な操作性」をうたった製品を多く出すようになりました。
ですが、そもそもその言葉に定義は無いように思えます。
UI研究所などでは、被験者に取説を与えずに新製品を操作してもらって、それでも使うことができるかを検証をしているところもあります。
ですがそもそもその実験の状況が非日常であり、自分で好きで買ったものをずっと何日間もいじるわけでもないので、「ボタンが見易い」とか「ヒント表示がわかりやすい」とか、実のところそのような手法では表層的な評価にとどまるのではないかと思います。
とは言いながらそこまでしっかり評価している製品ならまだマシです。単にiPhoneに操作感が似ているとか、Windowsに似ているとかで、「過去経験したソフトの操作性に近い」というだけで「直感的」と言っているだけの製品もあります。
最低限おさえたい「使いやすさ」のポイント
では何を持って「使いやすさ」を評価したらよいか。
究極的には、実際に使う人が実際の使い方で何度も試用してみるしかありません。
でも現実的にそれが難しいでしょうから、これも私の主観にはなってしまいますが、経験上クレームになりやすかった部分を踏まえて、あらゆる製品ジャンル及び利用シーン、利用デバイスにおいて共通して重要となるチェックポイントを挙げてみます。
使用頻度の高い操作の実行手順が少ないこと
当たり前のようで難しい点です。
よくあるのが、「階層性の統一」などと言って、あらゆるメニューを統一的な深さにするパターン。
論理的にはそのほうが美しいのかもしれませんが、使う方としてはどうでもよかったりします。
「一発設定」「一発接続」は重要です。これは別記事でも掘り下げています。
状況がわかりやすいこと
これは基本ですね。
会議が始まっているのかいないのか。自分が繋がっているのか、切れているのか。誰が参加していて誰ができていないのか。
更には「音声がミュートされているか否か」に至っては、間違えると大事件になってしまいます。
設計者の配慮が如実に出る部分で、デザインセンスも問われるところです。
右クリックやドラッグ操作がないこと
タッチパネルで使われる場合もありますし、タブレットやスマホとの操作感の統一性という意味でも、右クリックやドラッグ操作は不要なUIが望ましいです。
とかくWindowsユーザーは、右クリックすれば何か便利なメニューが表示されるとか、ドラッグ&ドロップでアイテムが移動できるとか思いがちです。
その思いを叶えてあげるのも、「経験からの予測通りに動く」という意味では良いUIとする立場もあります。
しかし、MACには右クリックはなかったわけですし、特定製品から得られる経験値を利用しているに過ぎません。
ATMの操作や自動券売機のように、基本的にはシングルタップで全て操作できるのが良いというのが筆者の考えです。
しかし、いろいろな考え方がある中で、「あらゆる利用シーン、デバイス」において重要なポイントとしてこれを挙げた大きな理由があるのです。
タッチUIがメインストリームになる現在においては、仮に自社でタッチパネルのモバイル端末などを使わないとしても、使っている製品自体がそれを意識したUIにアップデートされる可能性がおおいにあるからです。
その際にがらっと操作性が変わったのでは、学習しなおしとなります。
特にWEB会議では、バージョンアップを拒否することができないケースも多いです。
それは専用機あっても他人事ではありません。
自分が使っている製品の操作性に慣れていたとしても、いざ拠点が増えて1台追加しようしたらまったくUIが変わった製品しかもう買えなくなっている、ということもあります。
実際LifeSizeの専用機でも、従来はテレビのそれのようなボタンだらけのリモコンで一発操作していたものが、新製品ではスマホの操作性を思わせるようなアイコンを十字ボタンと決定キーで選択するUIに変わりました。
この変更は、従来モデルを使い慣れた人にとっては「使いにくい」ものです。一方で、新しく使い始める人、特にスマホ世代にとっては、親近感があり迷うことの少ない操作性であると言えるでしょう。
メーカーとしては新しい顧客を取り込んでいきたいわけなので、このようなUIの刷新の流れは今後も続くと思います。
一方で、画面をシンプルにしようとボタンが少なくなると、シングルクリックを多用しないと目的の機能にたどり着かないということになりかねません。上で言った「実行手順が少ない」とトレードオフの関係にもなります。
とりあえず試用してみて、「このUI、古臭っ」と思うような製品は、たとえそれが操作上困らなかったとしても、やめたほうが良いです。
まとめ
本記事では、「使いやすさ」の共通項としてチェックしておきたいポイントを3点挙げました。
しかし、ほかにも良質なUIの要素はたくさんあり、使う人やシーンに依存して重視すべき点が変わってくるでしょう。
本カテゴリの記事ではそのあたりも加えて少し細部も説明したいと思います。